比較する5つの軸

地域を比べる時、単価だけを見るのは間違いです。次の5つで比較します。

  1. 案件の量
  2. 単価の水準
  3. 競合するドライバーの数
  4. 1件あたりの移動距離
  5. 生活コスト(家賃・駐車場代)

このうち、最も見落とされるのが5番目です。同じ手取り40万円でも、家賃と駐車場代が月13万円の地域と、月7万円の地域では、生活の余裕がまったく違います。

案件の量

関西では大阪市とその周辺、東海では名古屋市とその周辺に案件が集中します。人口と事業所が多いほど、荷物が多い。これは単純です。

大阪圏は人口規模が大きく、通販の宅配案件も豊富です。名古屋圏は製造業の集積があるため、宅配に加えて企業間配送や部品輸送の案件が比較的多い傾向があります。

どちらも、都市中心部から離れるほど案件は減ります。ただし、後述するように競合も同時に減ります。

単価の水準

一般に、都市部のほうが単価は高くなる傾向があります。ただしその差は、案件の種類による違いのほうが大きい。同じ地域内でも、大手通販の宅配、企業配、チャーター便では単価がまったく違います。

地域間の差より、どの案件を取るかのほうが収入への影響は大きい。地域選びだけで収入が劇的に変わると期待するのは、現実的ではありません。

競合するドライバーの数

ここは重要な視点です。案件が多い地域は、それを狙うドライバーも多い。

大阪や名古屋の中心部では、参入するドライバーが多いため、良い条件の案件は取り合いになります。新規参入者がいきなり好条件の区画を任されることは、まずありません。

一方、滋賀、岐阜、三重といった周辺県では、ドライバーの数が相対的に少なく、案件を確保しやすい場合があります。特に企業配や地場の荷主との関係では、参入余地が残っていることがあります。

「案件が多い」と「自分が取れる」は別

都市部に案件が多いのは事実ですが、それがあなたに回ってくるかは別問題です。競合の少ない地域で確実に仕事を確保するほうが、結果的に稼働率が高くなることがあります。

1件あたりの移動距離

都市中心部は住宅密度が高く、移動距離が短い。1日100件を回っても走行距離は50km程度で済むことがあります。

周辺県では、同じ100件でも100kmを超えることがあります。燃料代が倍近くになり、拘束時間も伸びます。

ただし、周辺県では都市部のような駐車の困難さがありません。停める場所を探す時間、コインパーキング代、駐車違反のリスクが小さい。この差は数字に出にくいものの、実務では大きな違いです。

生活コストという決定的な差

都市中心部

家賃が高く、駐車場代も高い。月極で2万円を超えることは珍しくありません。固定費が手取りを削ります。

都市近郊

案件へのアクセスを保ちつつ、家賃と駐車場代が下がる。多くの場合、ここが最もバランスが良い。

周辺県

生活コストが最も低い。駐車場は自宅に確保できることも多く、固定費の負担が小さくなります。

例えば、都市中心部で手取り40万円、家賃10万円、駐車場2.5万円なら、残りは27.5万円です。周辺県で手取り35万円、家賃6万円、駐車場0.8万円なら、残りは28.2万円。単価が低くても、手元に残る額は逆転します。

条件別の結論

言い切ります。

  • とにかく短期間で稼ぎたい、体力に自信があるなら都市部。 案件が多く、件数を積み上げやすい。移動距離が短いため、1日に配れる上限が高い。
  • 家族がいて生活の安定を重視するなら、都市近郊か周辺県。 生活コストが低く、拘束時間も抑えやすい。手取りベースでは大きく劣りません。
  • 企業配で安定した収入を作りたいなら、製造業の集積がある地域。 東海の工業地帯や、滋賀の湖南地域といったエリアは、企業配の案件が取りやすい。
  • 未経験でこれから始めるなら、住んでいる場所の近くから。 移住してまで地域を変える必要は、最初の段階ではありません。まず地元で3ヶ月やってから考えてください。

移住を伴う場合の判断

寮や引越し費用の支援がある会社を使って、稼げる地域へ移るという選択肢もあります。特に、現在の居住地に案件が少ない場合は検討する価値があります。

ただし、判断の前に確認してください。

  1. 寮の費用は無料か、家賃が引かれるか。 引かれる場合、月いくらか。
  2. 寮に住める期間に制限があるか。 期間終了後に自分で借りる場合の相場も調べておきます。
  3. 契約を辞めた場合、引越し費用の返還を求められるか。 契約書で確認してください。
  4. 移った先で本当に案件があるか。 移住してから「思ったより仕事がない」では取り返しがつきません。
比べるべきは手取りではなく「残る額」

地域を比較する時は、手取り金額から家賃と駐車場代を引いた数字を出してください。この数字で比べると、都市部が必ずしも有利ではないことが分かります。単価の高さに惹かれて移り、生活コストで消えるというのが最も多い失敗です。

最後に

地域による差は確かにあります。しかし、同じ地域内でも、案件の選び方と働き方でそれ以上の差がつきます。

単価が2割高い地域へ移るより、経費率を5%改善し、誤配をゼロにして良い案件を任されるほうが、手元に残る金額は大きくなります。地域は前提条件のひとつであって、決定要因ではありません。

なお、貨物軽自動車運送事業の届出は管轄の運輸支局で行うため、地域を移る場合は変更の届出が必要になります。手続きの詳細は移転先の運輸支局で確認してください。