会社員時代と何が違うか

会社員から個人事業主になると、社会保険の内容が大きく変わります。整理します。

労使折半がなくなる

会社員の健康保険と厚生年金は、会社が半分負担していました。国保と国民年金は全額自己負担です。

傷病手当金がない

病気やケガで働けない期間の給付が、国民健康保険には原則としてありません。休めば収入はゼロです。

厚生年金がない

国民年金のみになります。将来受け取る年金額は、会社員を続けた場合より確実に少なくなります。

この3つは軽貨物という働き方の構造的な弱点です。会社が悪いのではなく、業務委託とはそういう契約形態です。だからこそ、自分で対策を打つ必要があります。

国民年金の保険料

国民年金の保険料は定額です。所得がいくらであっても同じ金額を払います。令和8年度(2026年度)の保険料は月額17,920円です。年間では約21万5千円になります。

金額は年度ごとに改定されるため、最新の額は日本年金機構の情報で確認してください。

納付方法によって割引があります。前納(まとめて先払い)や口座振替を選ぶと、保険料が少し安くなります。まとまった資金を用意できるなら、この割引は使う価値があります。

国民健康保険の仕組みと落とし穴

国保の保険料は、前年の所得をもとに計算されます。ここが最大の落とし穴です。

開業1年目は、前年が会社員だった場合、その給与所得をもとに計算されます。そして開業2年目は、1年目に稼いだ事業所得をもとに計算されます。

つまり、軽貨物で稼いだ分の国保料の請求は、翌年に来ます。1年目の感覚のまま生活していると、2年目の6月頃に届く通知を見て資金繰りが崩れます。

保険料の計算方法と料率は自治体によって異なります。正確な金額は、お住まいの市区町村の窓口かウェブサイトで確認してください。多くの自治体で試算のためのシミュレーションが公開されています。

2年目に備える

1年目のうちから、国保と住民税のために毎月一定額を積み立ててください。所得の水準にもよりますが、月に数万円は見ておくべきです。この積立をしていない人が、2年目に「なぜこんなに取られるのか」と混乱します。

負担を軽くする正攻法

脱法的な方法ではなく、制度として認められた手段を挙げます。

  1. 青色申告で所得を正しく下げる。 青色申告特別控除で所得が減れば、所得税・住民税だけでなく、翌年の国保料も下がります。効果が3方向に効く、最も費用対効果の高い手段です。
  2. 経費を漏らさず計上する。 領収書を捨てないだけで所得が下がります。ただし、私的な支出を混ぜるのは脱税です。線は守ってください。
  3. 小規模企業共済に加入する。 掛金の全額が所得控除の対象になる制度です。退職金を自分で積み立てる仕組みでもあり、将来の備えと節税を同時に実現できます。
  4. iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する。 こちらも掛金が全額所得控除の対象です。老後資金の準備と節税を兼ねられます。ただし原則として60歳まで引き出せません。
  5. 国民年金基金を検討する。 国民年金に上乗せする制度です。掛金は社会保険料控除の対象になります。
  6. 付加年金を利用する。 月額400円を上乗せして納めると、将来受け取る年金が増える制度です。金額が小さいわりに効果があります。国民年金基金との併用には制限があります。

払えない時の制度

収入が落ちて保険料が払えない場合、放置するのが最悪の対応です。制度があります。

  • 国民年金保険料の免除・納付猶予。 所得が一定以下の場合、申請により保険料の全額または一部が免除される制度があります。免除された期間も年金の受給資格期間に算入されます。未納のまま放置すると、この扱いにはなりません。
  • 国民健康保険料の減免。 災害や失業、所得の大幅な減少などの事情がある場合、自治体によって減免制度があります。窓口に相談してください。

いずれも申請が必要です。黙っていて適用されることはありません。苦しい時こそ、窓口に行ってください。

未納が最も損をする

国民年金を未納のまま放置すると、将来の年金額が減るだけでなく、障害年金や遺族年金を受け取れなくなる可能性があります。事故で障害が残った時に、年金が出ないという事態が起こり得ます。払えないなら免除申請をしてください。放置とは意味がまったく違います。

将来の年金は薄い。直視してください

ここは正直に書きます。国民年金だけでは、老後の生活費として十分とは言えません。会社員が受け取る厚生年金と比べれば、その差は大きい。

軽貨物で稼げている時期は、この問題が見えません。しかし、体が動かなくなった時に受け取れる年金の額は、今の働き方で決まっています。

だからこそ、小規模企業共済やiDeCoといった上乗せの制度を、稼げているうちに始める意味があります。これらは節税になると同時に、将来の自分への仕送りです。

働けなくなった時の備え

傷病手当金がないという事実は、軽視できません。インフルエンザで1週間寝込めば、その1週間の収入はゼロです。腰を痛めて1ヶ月休めば、1ヶ月分がゼロです。

対策は2つあります。生活費の数ヶ月分を常に手元に置いておくこと。そして、所得補償保険への加入を検討することです。

どちらも「今は元気だから」と後回しにされがちですが、必要になった時には手遅れです。

まとめ

社会保険の負担は、軽貨物の手取りを考えるうえで避けて通れない要素です。売上から経費を引いた額が手取りだと思っていると、必ず足をすくわれます。

やるべきことは3つです。青色申告で所得を正しく下げる。翌年の国保と住民税のために毎月積み立てる。稼げているうちに小規模企業共済かiDeCoを始める。

保険料の額や制度の内容は改定されます。日本年金機構やお住まいの自治体の最新情報を確認してください。