開業届とは何か
正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。個人で事業を始めたことを税務署に知らせる書類です。軽貨物ドライバーとして業務委託で働くなら、あなたは個人事業主なので、この届出の対象になります。
提出期限は、事業を開始した日から1ヶ月以内です。書式は国税庁のサイトからダウンロードできます。手数料はかかりません。
各欄の書き方
迷いやすい欄だけを、軽貨物ドライバーの例で説明します。
- 納税地: 通常は自宅の住所です。住民票のある場所を記入します。
- 氏名・生年月日・個人番号: マイナンバーが必要になるので、通知カードかマイナンバーカードを手元に用意してください。
- 職業: 「貨物軽自動車運送業」または「運送業」と書きます。「ドライバー」だけでは職業として不明瞭なので避けてください。
- 屋号: 空欄でも構いません。屋号名義の銀行口座を作りたい場合や、対外的な名前を持ちたい場合に記入します。後から変更もできます。
- 届出の区分: 新たに始める場合は「開業」を選びます。
- 所得の種類: 「事業(農業)所得」の事業所得を選びます。
- 開業・廃業等日: 実際に仕事を始めた日を書きます。契約日でも初稼働日でも構いませんが、根拠を説明できる日にしてください。
- 事業の概要: 「軽自動車による貨物運送、宅配および企業向け配送業務」のように、具体的に書きます。
- 給与等の支払の状況: 従業員を雇わず1人で働くなら、記入は不要か「なし」となります。
開業届の中に、青色申告承認申請書を提出するかどうかのチェック欄があります。ここに「有」を付けて、青色申告承認申請書も一緒に提出してください。この1ヶ所が、この記事で最も重要な部分です。
なぜ青色申告承認申請書を同時に出すのか
理由は3つあります。
- 期限が短いから。 青色申告の承認申請は、原則としてその年の3月15日までです。ただし新規開業の場合は、開業した日から2ヶ月以内が期限になります。開業届を出した後で「やっぱり青色にしよう」と思い出した時には、期限を過ぎている可能性が高い。
- 1年待たされるから。 期限を逃すと、その年は白色申告になります。青色申告が使えるのは翌年からです。初年度に受けられたはずの控除を丸ごと失います。
- 手間がほとんど変わらないから。 同じ税務署へ、同じ日に、もう1枚出すだけです。窓口も同じです。やらない理由がありません。
青色申告の特別控除は最大65万円です。控除の要件や具体的な金額差は別途確認が必要ですが、申請書を1枚出すか出さないかで税負担が大きく変わることは間違いありません。
提出方法は3つ
窓口へ持参
最も確実です。その場で控えに収受印をもらえます。書き方に不安があるなら、窓口で確認しながら書けます。
郵送
控えと返信用封筒(切手貼付)を同封すれば、収受印を押した控えが返送されます。平日に動けない人向けです。
e-Tax
マイナンバーカードがあればオンラインで完結します。送信後の受信通知が控えの代わりになります。
控えは必ず取っておく
開業届の控えは、後から何度も使います。捨てないでください。
- 屋号名義の銀行口座を作るとき — ほぼ必ず提示を求められます。
- 事業用のクレジットカードを申し込むとき — 事業実態の証明として使われます。
- 融資や補助金を申請するとき — 個人事業主であることの基本資料になります。
- 保育園の入園申請 — 就労証明の一部として求められる自治体があります。
紙の控えはスキャンかスマホ撮影でデータ化し、クラウドにも置いておくことを勧めます。紛失した場合、税務署で保有個人情報の開示請求という手続きが必要になり、時間がかかります。
開業届を出すと変わること
いくつか注意点があります。
- 失業給付との関係。 開業届を出すと事業を始めたと扱われるため、雇用保険の失業給付を受給している最中の人は注意が必要です。ハローワークに事前確認してください。
- 扶養から外れる可能性。 配偶者の社会保険の扶養に入っている場合、所得の状況によって扶養から外れることがあります。加入している健康保険組合の基準を確認してください。
- 帳簿をつける義務が生じる。 特に青色申告を選ぶなら記帳が前提です。会計ソフトを最初から導入しておくのが結局いちばん楽です。
すでに稼働を始めていて、開業届を出していないケースは珍しくありません。期限は過ぎていても、届出自体は受け付けてもらえます。気づいた時点で早めに提出してください。放置しても状況は良くなりません。
黒ナンバーの手続きとは別物
混同されがちですが、開業届は税務署に対する税務上の手続きです。運輸支局に出す貨物軽自動車運送事業の届出とは、まったく別の手続きです。どちらか一方をやれば済むものではなく、両方が必要になります。
書式や取扱いは改正されることがあります。実際に提出する前に、国税庁の公式情報で最新の様式と記載要領を確認してください。