件数を決めているのは「探す時間」

宅配で1日に配れる件数を決めているのは、運転技術でも体力でもありません。荷物を探す時間です。

1件あたり20秒探していれば、100件で33分。30秒なら50分です。この時間は、そのまま配れたはずの件数として失われています。1件3分で配れるなら、50分は約16件分。単価150円なら2,400円が毎日消えている計算になります。

逆に言えば、積み方を変えるだけで、走る距離を1メートルも増やさずに件数が伸びます。これが積み込みが最も費用対効果の高い改善である理由です。

基本原則:配達順の逆に積む

最初に配る荷物を手前、最後に配る荷物を奥。これが大原則です。

当たり前に聞こえますが、実際にはできていない人が多い。理由は、積み込みの段階でルートが決まっていないからです。荷物を積みながらルートを考えると、順序が崩れます。

正しい手順は、先にルートの骨組みを決めてから積むことです。時間指定の荷物を先に抜き出し、残りをエリアのブロックごとに分けてから、逆順に積んでいきます。

荷室のゾーニング

荷室を場所で区切ります。どこに何があるかを、見なくても分かる状態にするのが目的です。

手前(ドア側)

直近で配る荷物と、時間指定が近いもの。すぐ手が届く場所です。ここに小物を置くと埋もれるので注意します。

中央

その日の主力となる荷物。ブロックごとに固めて置きます。ブロックの境目を意識して積むと、探しやすくなります。

奥・端

最後に配る荷物、返品、集荷した荷物。配達中に触らないものを置く場所と決めておきます。

加えて、小さい荷物専用のコンテナかカゴを1つ置くと効果があります。封筒や小箱は大きな荷物の隙間に落ちて行方不明になりがちです。小物は必ず1ヶ所にまとめてください。

重い物は下、そして前

荷崩れと安全のための基本です。

  • 重い物は下。 上に置くと崩れた時に軽い荷物を潰します。
  • 重い物は前(運転席寄り)。 後輪より後ろに重量が偏ると、走行が不安定になります。特にカーブと急ブレーキで挙動が変わります。
  • 割れ物は上、または独立して置く。 他の荷物の下敷きにしないでください。
  • 縦置き指定のものは倒さない。 液体や精密機器は、指定の向きを守ります。

視界を塞がない

ここは安全の問題です。積み上げすぎてルームミラーが使えない状態は危険です。特に軽貨物は後退の機会が多く、後方が見えないことは直接事故につながります。

ルームミラーで後方が確認できる高さを上限にしてください。どうしても積む量が多い日は、サイドミラーだけに頼る運転になることを自覚し、後退の際は一度降りて確認する習慣を持ってください。

荷崩れは運転にも影響する

走行中に荷物が動くと、その音と衝撃で運転への集中が切れます。ブレーキのたびに前へ滑ってくる状態は、危険であるだけでなく、精神的にも消耗します。荷崩れ防止は商品を守るためだけの作業ではありません。

固定に使う道具

  • 荷締めベルト・ラチェットベルト。 大きな荷物をまとめて固定します。1本あると安心感が違います。
  • 突っ張り棒。 荷室に横方向に渡して、荷物が前へ滑るのを防ぎます。安価で効果が大きい。
  • コンテナ・折りたたみコンテナ。 小物をまとめる。空になったら畳めるので邪魔になりません。
  • 滑り止めマット。 荷室の床に敷くと、軽い荷物が滑りにくくなります。
  • ネット。 荷室全体を覆って、荷物の飛び出しを防ぎます。

全部を最初から揃える必要はありません。突っ張り棒とコンテナ、この2つから始めれば十分に効果があります。

積み込みにかける時間の目安

100件から120件を積むなら、15分から25分は使ってください。5分で雑に積み終える人と、20分かけて整理する人では、その日の終了時刻が逆転します。

積み込みを急ぐのは、目の前の時間を節約しているように見えて、その後の8時間を犠牲にする選択です。ここは焦らないでください。

積み込み中に頭の中でルートを走る

荷物を1つずつ置きながら、その住所へ行く自分を想像します。この作業をしておくと、走り出してからナビを見る回数が激減します。積み込みは、荷物を移動させる作業であると同時に、その日の予習でもあります。

1日の途中で崩れたら、必ず立て直す

午前の配達が終わる頃には、荷室は必ず乱れています。ここで昼休憩の前に3分使って積み直してください。

午後の分を手前に寄せ、返品や集荷した荷物を奥へ移す。それだけで午後の効率が戻ります。乱れたまま午後を走ると、探す時間が積み重なって終業が遅れます。

結論

件数を伸ばしたいなら、まず積み込みを見直してください。運転を速くするのは危険で、効果も限定的です。積み方を変えるのは無料で、安全で、効果が確実に出ます。

探す時間をゼロに近づける。これが軽貨物で件数を伸ばす、最も再現性のある方法です。なお、荷物の固定と視界の確保は、安全運転の基本でもあります。国土交通省や全日本トラック協会も、輸送の安全に関する情報を公開しています。