ルートを線で考えない
ルートを組むと聞くと、地図上に1本の線を引くイメージを持つ人が多い。100件の荷物を1本の線でつなごうとすると、頭が破裂します。
正しいのは、エリアを塊に分けて、塊の順番だけを決めることです。塊の中は、その場に着いてから細かく回ればいい。考えるべき単位が100個から6個に減ります。
ステップ1:エリアをブロックに割る
担当エリアを、5個から8個のブロックに分けます。分ける基準は次のとおりです。
- 大きな道路で区切る。 幹線道路や線路をまたぐと移動に時間がかかります。またぐ回数を減らすため、道路を境界にします。
- 川で区切る。 橋がある場所は限られます。川の両岸は別ブロックにしてください。
- 建物の種類で区切る。 大型マンションが集中するエリア、戸建てが並ぶエリア、商店街。作業のリズムが違うので分けます。
この作業は最初の1週間でやります。紙の地図に線を引くだけで構いません。むしろ紙のほうが全体像を掴めます。
ステップ2:時間指定で骨組みを作る
次に、その日の時間指定の荷物を全部書き出します。これが動かせない予定であり、1日の骨組みになります。
午前指定が3件、14時から16時が5件、19時以降が8件。この予定をまず時系列に並べます。そして、その時間にそのブロックにいられるように、ブロックの巡回順を逆算します。
やってはいけないのは、時間指定を無視してブロックを回り、後から時間指定を拾いに戻ることです。この戻りが、1日の中で最大の無駄になります。
時間指定=動かせない骨、それ以外=どこにでも入れられる肉。骨を先に置いて、隙間に肉を詰める。この順番でルートを組むと、無理のない組み立てになります。逆をやると必ず破綻します。
ステップ3:右左折を減らす
これは物流の世界で古くから知られている原則です。右折は、対向車の切れ目を待つ必要があるため、左折より時間がかかります。日本の道路では右折が待ち時間を生みます。
1回の右折で失う時間が20秒だとして、1日30回右折すれば10分です。ブロックの中を反時計回りではなく時計回りに回るよう意識するだけで、この時間が浮きます。
完璧にやる必要はありません。「なるべく左折で回る」と意識するだけで、自然に減ります。
ステップ4:戻りを作らない
一度通った道を、もう一度通らない。これがルート設計の目的そのものです。
戻りが発生する原因は3つあります。時間指定の見落とし、積み込み順の乱れ、そして「近いから後で」と後回しにした荷物です。特に3つ目が多い。近いから後で回れると思った荷物が、結局最後に取り残されて往復を生みます。
そのブロックにいる間に、そのブロックの荷物は全部配る。この原則を守ってください。
ナビの限界
ナビが得意なこと
A地点からB地点までの道順。渋滞の回避。知らない住所の場所を特定すること。ここは全面的に頼っていい。
ナビが苦手なこと
100件をどの順で回るか。どこに停めれば効率がいいか。この建物の入口はどこか。これは自分で覚えます。
自分で作る情報
駐車しやすい場所、マンションの入口と宅配ボックスの位置、細い道の入り方、混む時間帯。これが本当の資産です。
自分の地図を作る
スマホのメモでも、紙の地図への書き込みでも構いません。次の情報を記録していってください。
- 停めやすい場所(マンションごと、通りごと)
- オートロックの建物と、その対応方法
- 宅配ボックスの位置と、空きが多い時間帯
- 一方通行と、入れない細い道
- 混雑する時間帯と、避けるべき交差点
- 間違えやすい住所
この蓄積が、3ヶ月目に件数が跳ねる理由です。ベテランが速いのは、運転が速いからではなく、この情報を持っているからです。
1日を3分割で設計する
大まかな時間配分の型を持っておくと楽になります。
午前(8時から12時):午前指定と企業配を優先します。企業は昼休みに受け取れないことが多いので、午前中に済ませます。
午後(12時から17時):件数を稼ぐ時間帯です。不在が多い時間でもあるので、置き配指定の荷物をここで消化します。
夜(17時から21時):在宅率が最も高い時間です。午後に不在だった家と、夜の時間指定をまとめて回ります。
この型を持っていると、その日の荷物を見た瞬間に、おおよその配分が組めるようになります。
1日の走行距離を停車回数で割ってください。この数字が小さいほど、効率の良いルートです。件数だけを見ていると、走りすぎていることに気づけません。同じ100件でも、走行距離が80kmと50kmでは、燃料代も疲労もまったく違います。
ルートは毎日少しずつ良くなる
完璧なルートを最初から組める人はいません。今日の失敗を1つメモして、明日に反映する。これを3ヶ月続けた人が、同じ時間で1.5倍配れるようになります。
最後に安全について。効率を追うあまり、無理な右左折や速度超過をすれば意味がありません。ルート設計の目的は、急がずに早く終えることです。焦らなくていい状態を作るのが、良いルートです。