経費は2種類に分けて考える
軽貨物の経費は、走っても走らなくても出ていく固定費と、走った分だけ増える変動費に分かれます。この2つを混ぜて「今月は20万円かかった」と眺めているうちは、どこに手を入れればいいのか永遠に見えません。
固定費は、稼働がゼロの月にも請求が来ます。だから体調を崩した月や閑散期に効いてきます。変動費は稼働に比例するので、売上が増えれば一緒に増えるのが正常です。危険なのは、売上が伸びていないのに変動費だけ膨らんでいる状態です。
固定費:働かなくても出ていくお金
- 車両リース料:月5万〜7万円 — 軽貨物の固定費で最大の項目です。整備・車検込みのプランか、車両のみかで内容が変わります。
- 事業用の任意保険:月1万〜2万5千円 — 年齢、等級、補償内容で大きく差が出ます。20代は高く、等級が進むほど下がります。
- 貨物保険:月2千〜5千円 — 荷物の破損・紛失に備える保険です。元請けが包括で加入しているケースもあります。
- 駐車場代:月8千〜2万5千円 — 地方と都市部で最も差が出る費目です。名古屋市内や東京23区では2万円を超えることもあります。
- 通信費:月5千〜1万円 — 配送アプリは通信量を食います。速度制限がかかると仕事が止まるので、容量は削らないでください。
- 会計ソフト:月1千〜2千円 — 青色申告をするなら実質必須です。この費用をケチる意味はありません。
固定費の合計はおおむね月9万〜13万円。稼働ゼロの月でもこれだけ出ていきます。
変動費:走った分だけ増えるお金
- 燃料代:月3万〜6万円 — 走行距離と案件の性質で決まります。長距離のチャーター便では跳ね上がります。
- 高速道路代:月0〜3万円 — 案件次第です。元請けが負担するのか自己負担かは、契約前に必ず確認してください。
- 消耗品・備品:月3千〜8千円 — テープ、軍手、台車の交換部品、雨具、スマホホルダー、車内の整理用品など。
- 車検・整備の積立:月1万〜1万5千円 — 実際の支払いは年に数回でも、毎月積んでおく前提で計上します。
- コインパーキング代:月3千〜1万5千円 — 都市部の宅配では無視できない金額になります。
変動費の合計はおおむね月5万〜10万円。フル稼働の月ほど大きくなります。
削っていい費目、削ってはいけない費目
削っていい
駐車場(少し歩く場所に変える)、高速代(時間対効果で判断)、備品の買いすぎ、稼働に必要ない車のカスタム費用。ここは工夫で減らせます。
見直す価値がある
車両リース(契約更新時に条件を比較)、任意保険(補償を落とすのではなく他社と相見積もり)、通信プラン。金額が大きいので効果も大きい費目です。
絶対に削らない
任意保険の補償額、貨物保険、タイヤとブレーキの整備、オイル交換。ここを削るのは、収入源そのものを賭けにいく行為です。
はっきり言います。保険と整備を削って浮かせた数千円は、事故か故障が一度起きた瞬間に何十倍にもなって返ってきます。対人対物の補償を下げる、車検を先延ばしにする、タイヤの溝が減っているのに走り続ける。この3つは、目先の数万円のために事業ごと失う行為です。
固定費を月1万円下げると、年間で12万円が確実に残ります。これは売上を12万円伸ばすのとは意味が違います。売上を伸ばすには走る距離と時間が必要ですが、固定費の削減は一度手を打てば毎月効き続けます。まず固定費、次に売上です。
経費率で自分の状態を診断する
経費率は「経費 ÷ 売上」です。この数字を毎月出すだけで、自分の事業が健全かどうかが一目で分かります。
- 20%台:健全です。 車両と案件の組み合わせがうまくいっています。
- 30%前後:許容範囲です。 ただし固定費を一度見直す価値はあります。
- 35%超:構造的な問題があります。 案件の単価が低すぎるか、車両にお金をかけすぎているか、走行距離に対して報酬が見合っていません。
- 40%超:危険です。 稼働を増やしても手元は増えません。案件そのものを変えるべきです。
経費率が上がっている時のサイン
数字を出す前に気づけるサインがあります。次のどれかに当てはまるなら、経費率は確実に悪化しています。
- 給油の回数が増えたのに、配達件数は変わっていない。 移動距離だけが伸びている状態です。担当エリアが広がりすぎているか、ルートに無駄があります。
- コインパーキング代のレシートが増えた。 停める場所の判断が後手に回っています。
- 車の修理が2ヶ月に一度以上発生している。 車両の寿命か、予防整備をサボっている証拠です。
- 売上は先月と同じなのに、手元の現金だけ減っている。 最も分かりやすい警告です。
記録を残さないと何も改善できない
経費の管理でいちばん大事なのは、節約のテクニックではなく記録です。レシートを撮って会計ソフトに入れる、給油のたびに走行距離をメモする。この習慣がないと、経費率もサインも把握できません。
記録は確定申告のためだけの作業ではありません。自分の事業がどこで漏れているかを見つける唯一の手段です。月末に30分、費目ごとの合計を眺める時間を作ってください。それだけで、翌月に手を打つべき場所が見えます。
なお、どの支出が税務上の経費として認められるかは別の判断が必要です。また、車検や点検の制度、保険料の水準は変わることがあるため、最新の情報は軽自動車検査協会や国税庁の公式情報で確認してください。