3つの業態は別の仕事だと思ったほうがいい
同じ軽貨物でも、宅配と企業配とチャーター便では、1日の動き方も収入の作り方もまったく違います。同じ車に乗っているだけで、中身は別の仕事です。まずそれぞれの性質を押さえます。
宅配
通販の荷物を個人宅へ届けます。1件あたりの単価は低いが件数で積み上げる型。慣れるほど件数が伸び、収入が素直に上がります。
企業配送
決まった企業や店舗へ定期的に届けます。件数は少なく、時間は読めます。単価は中程度で、収入の振れ幅が小さいのが特徴です。
チャーター便
1件の依頼で車を貸し切ります。長距離や緊急便が中心。1件の単価は圧倒的に高いが、仕事の有無が日によって変わります。
6つの軸で比較する
1. 単価
チャーター便が最も高く、次に企業配、宅配が最も低くなります。ただし宅配は1日100件以上こなせる案件があるため、単価の低さは件数で埋まります。「単価が低い=稼げない」ではありません。
2. 件数と積み上げ方
宅配は件数を伸ばせば伸ばすほど売上が増える、努力が最も素直に反映される型です。企業配は届け先が決まっているため、頑張っても件数は増えません。チャーターは1日1件から数件です。
3. 拘束時間
企業配が最も読めます。朝出て夕方に終わる、という生活が組めます。宅配は夜の時間指定があるため終わりが遅くなりがちです。チャーターは最も読めません。深夜に呼ばれることも、長距離で帰宅が翌日になることもあります。
4. 収入の安定性
企業配が最も安定します。取引が続く限り毎月ほぼ同じ金額です。宅配は繁忙期と閑散期で波がありますが、日々の荷物量はある程度読めます。チャーターは最も不安定で、仕事がない日は売上ゼロです。
5. 体力負荷
宅配が最も重いです。1日に何百回も乗り降りし、階段を上がり、荷物を抱えます。企業配は1件あたりの荷物が重いこともありますが、回数が少ない分だけ負担は分散します。チャーターは運転時間が長く、体より集中力を消耗します。
6. 参入のしやすさ
宅配が最も入りやすく、未経験でも即日から案件があります。企業配は取引先の信頼が前提なので、実績のない新人がいきなり入るのは難しい。チャーターは荷主とのつながりや配車マッチングへの登録が必要で、車両の条件も問われます。
時間あたりの利益で並べ直す
ここが本題です。案件を売上で比べるのは間違いです。正しい比較は、売上から燃料と高速代を引き、それを拘束時間で割った数字です。
例えば、1件2万円のチャーター便があったとします。魅力的に見えます。しかし片道150kmを走り、現場で2時間待機し、帰りは空車。拘束は10時間、燃料と高速で6,000円かかったとすれば、手元に残るのは14,000円で、時間あたり1,400円です。
一方、宅配で1日120件、単価150円なら売上18,000円。拘束9時間、燃料2,000円なら残りは16,000円で、時間あたり約1,780円です。単価では13倍の差があったのに、時間あたりでは宅配が上回ります。
待機時間、空車での回送距離、そして「その日は他の仕事を受けられない」という機会損失。この3つを計算に入れないまま高単価に飛びつくと、忙しいのに手元にお金が残らない状態になります。
誰にどれを勧めるか
結論を書きます。
- 未経験でこれから始める人は、迷わず宅配です。 案件が豊富で、研修があり、収入が早く立ち上がります。何より、配送の基礎体力がここで身につきます。宅配で3ヶ月続けられない人は、他の業態でも続きません。
- 家庭があり、生活リズムを守りたい人は企業配です。 収入の上限は宅配より低くなりますが、終業時間が読めることの価値は、金額に換算できないほど大きい。子どもの行事に出たい、夕食を家族と食べたい人はこちらです。
- チャーター便は、実績と人脈ができてからの選択肢です。 未経験でいきなり飛び込むと、待機と空車で疲弊します。宅配や企業配で信頼を作り、良い荷主と直接つながれるようになってから比重を上げてください。
- 体力に自信がない、腰に不安がある人は宅配を主軸にしないでください。 続きません。企業配やルート便を探すべきです。
組み合わせるという現実解
実際に長く続けている人の多くは、1つの業態に絞っていません。平日は企業配で土台を作り、繁忙期だけ宅配を足す。あるいは宅配を主軸にして、条件のいいスポットだけ受ける。こうした組み合わせが最も現実的です。
理由は収入の安定です。1つの業態、1つの取引先に100%依存していると、その案件が終わった日に売上がゼロになります。業態を分散させておくことは、稼ぎ方の工夫であると同時に、事業のリスク管理でもあります。
案件を受ける前に必ず確認すること
どの業態を選ぶにせよ、契約前に次の点を確認してください。ここを曖昧にしたまま始めると、想定した利益は残りません。
- 報酬の計算方法(件数制か日額保証か、どの作業まで含むか)
- 高速代・駐車場代を誰が負担するか
- 待機時間に対する報酬の有無
- 締め日と支払日(フリーランス法では発注側に取引条件の明示が求められています)
- 荷物の破損や未配が発生した場合の扱い
特にチャーター便では、待機時間の報酬と帰り荷の有無が利益を左右します。「片道の単価」だけで判断しないでください。
なお、軽貨物であっても安全管理の重要性は年々高まっています。どの業態を選んでも、無理な稼働で事故を起こせば収入は止まります。時間あたりの利益は、安全に走り切れる範囲の中で最大化するものです。