初期費用の全項目

まず、開業そのものにかかる費用を並べます。金額は目安であり、地域や条件で変わります。

  • 車両 — 最も大きく変動する項目です。リースなら初期費用は保証金や初月分のみ。中古購入なら車両価格が丸ごとかかります。
  • 任意保険の初回支払い — 月払いなら1ヶ月分、年払いなら数万円から十数万円。事業用は自家用より高くなります。
  • 貨物保険 — 加入する場合の初回分です。元請けが包括で加入していれば不要なこともあります。
  • 黒ナンバーの手続き費用 — 自分でやれば数千円程度。行政書士に頼めば2万円から5万円程度が加わります。
  • 駐車場の初期費用 — 月極を借りる場合、初月分と保証金で2万円から5万円程度。
  • 備品一式 — 台車、荷締めベルト、カッター、軍手、養生テープ、レインウェア、防寒具、スマホホルダー、モバイルバッテリー、懐中電灯、地図。合わせて2万円から4万円程度。
  • スマホと通信契約 — 既存のものを使えるなら追加費用は不要です。
  • 当面の燃料代 — 初回の入金までの分として3万円から5万円は見ておきます。

パターン別の総額

リース利用

車両の初期負担がほぼないため、開業費用は15万円から25万円程度に収まります。最も参入しやすい形です。

中古車を購入

車両価格が30万円から80万円。整備と諸費用を含めると、総額は50万円から110万円程度になります。

持ち込み(既存車あり)

すでに軽バンを持っているなら、黒ナンバー化と保険の切替だけ。10万円前後で始められます。

ここまでが、よくある「開業費用」の記事の内容です

そして、ここで終わる記事を読んで始めた人が、2ヶ月目に資金繰りで詰まります。理由は次の章です。

本当に必要なのは「最初の入金までの生活費」

業務委託の報酬には支払いサイトがあります。月末締めの翌月末払いなら、初稼働から最初の入金まで最長で2ヶ月近く空きます。

その間、収入はゼロです。しかし家賃、食費、光熱費、通信費、そして車両リース料や保険料は毎月出ていきます。つまり、開業費用を払い切った時点で貯金がゼロなら、その瞬間に詰みが確定しています。

だから必要額は、次の式で考えてください。

  • 必要な総額 = 開業費用 + 生活費3ヶ月分 + 経費3ヶ月分

生活費が月20万円なら60万円。3ヶ月分の経費が45万円。リースで開業費用が20万円なら、総額は125万円です。中古車を買うならさらに増えます。「10万円で始められる」という話とは、桁が違って見えるはずです。

資金を減らす現実的な方法

125万円を用意できない人が大半でしょう。だから、必要額そのものを下げる手を打ちます。

  1. 週払いの案件を選ぶ。 これが最も効きます。週払いなら、入金までの空白が1週間程度に縮まります。必要な生活費の備えが3ヶ月分から1ヶ月分程度まで下がります。この差は決定的です。
  2. 車両はリースから始める。 続くかどうか分からない段階で数十万円を車に投じるのは、リスクの取り方として合理的ではありません。続くと確信してから購入を検討すれば十分です。
  3. 会社員のうちに準備を済ませる。 退職前に、クレジットカードを作り、必要な備品を揃え、車両の目星をつけておく。開業後は各種の審査が通りにくくなります。
  4. 寮や住居支援の制度を使う。 遠方から移る場合、寮や引越し費用の支援がある会社を選べば、初期費用の中で最も重い住居関連の負担が消えます。
  5. 備品を一度に全部買わない。 最初に必要なのは台車、軍手、テープ、雨具、スマホホルダー程度です。残りは働きながら必要になった時に買えば足ります。

やってはいけない資金の作り方

ここははっきり書きます。開業資金を消費者金融やカードのキャッシングで作るのはやめてください。

理由は金利ではありません。返済が始まった時点で、あなたの月々の固定費が増えるからです。ただでさえ入金までの空白がある時期に、返済という新しい固定費を抱えると、判断が焦ります。焦った判断は、無理な稼働と事故につながります。

資金が足りないなら、始める時期を3ヶ月遅らせて貯めるほうが、結果的に早く軌道に乗ります。

開業費は経費として扱える

開業のために支出した費用は、開業費として資産計上し、後から必要経費に配分していく扱いができます。領収書は開業前のものも含めて必ず保管してください。捨てた領収書は、そのまま余分に払う税金になります。

チェックリスト

始める前に、次の質問に全部イエスと答えられるか確認してください。

  1. 開業費用を払った後に、生活費が最低1ヶ月分残るか。
  2. 最初の入金がいつになるか、日付で言えるか。
  3. 週払いがあるか、ないなら空白期間を耐えられるか。
  4. 車両リースの月額と、契約期間、中途解約の条件を把握しているか。
  5. 任意保険が事業用に対応しているか確認したか。

1つでもノーがあるなら、まだ始める段階ではありません。この5つを潰してからのほうが、確実に上手くいきます。

なお、報酬の支払期日については、フリーランス法で発注事業者にルールが定められています。契約前に締め日と支払日を書面で確認してください。